ChatGPTとJibangoID

 ネット上のフリーコメントの投稿について、実名だと内容に責任が重くのしかかり、「物言えば唇寒し」状態となり、萎縮してしまう恐れがあります。また、権威に追従して、八方美人的で、お互いを褒め合う馴れ合い的なものとなり、真実から遠ざかるでしょう。

 逆に匿名だとボットや成りすましなど、架空や偽の人物による投稿が横行し、内容が無責任で言いたい放題になり、感情的な罵詈雑言であふれた、読むに堪えないものとなり、やはり真実から遠ざかるでしょう。

 そこで投稿に使用する名前として、実名と匿名の中間的な性質を持った名前(識別子)が求められます。それは、一意性は確保されるが、社会的プロフィールを含まないので、現実世界の個人を特定できない識別子です。それはまさしくJibangoIDですが、そのようなIDによる投稿こそが、集団の本音を反映し、集合知的な真実(最適解)に迫るものと考えます。

 ChatGPTなどの生成系AIが素材としてフリーコメントを収集する際に、このID投稿という、集団の本音を反映する中核的な帯域を疎かにしてしまうと、生成される回答も的外れで納得性の低いものになるでしょう。

 さらに、ID投稿の中でも真実性には濃淡があり、より真実性の高いものを浮かび上がらせ、低いものを沈める仕組みが必要です。それがBitcoinの投げ銭による人気投票です。人々が真実性(納得性)の高い投稿に対して、Bitcoinを投げ銭することで、多くの人から賛同を得られるようなコメントを投稿しようとするインセンティブが生まれ、素材の質が高まるでしょう。

 生成系AIの法的規制以前に、素材の質の向上、すなわち集合知性(CI:Collective Intelligence)を最適解に近づける仕組みこそが、それを元に生成されるAIの回答の的確性、(人類にとっての)安全性を高めることにつながると考えます。

集合知性(CI:Collective Intelligence)によるファクトチェック

前述のID投稿をファクトチェックに用いれば、「不特定多数の人々が行う、不特定多数の人々が資金を提供するファクトチェック」が可能となります。それは「特定少数の人々が行う、特定少数の人々が資金を提供するファクトチェック」より、優れていることは明らかでしょう。人類規模で、新たな知見が次々と加わり、ファクトも時々刻々と変遷していきます。それに追いつけるのは集合知性(CI)だけであり、その膨大なデータをサマライズし、その時々のファクトの断面を描き出してくれるのが生成系AIだと思います。

マイナンバーとJibangoID

マイナンバーを素のままインターネット上で流通させることが危険であることは誰でも漠然と感じていることでしょう。政府も推奨していません。一方、マイナンバーにマスクをかけた別の番号なら安全に流通させることが可能です。盗まれても誰のものかわからないからです。

このマスクをかけるというのは暗号化するということですが、Bitcoinなどの暗号通貨で使われている技術を利用します。原理を単純化して説明すると、対象となる番号を因数分解して、2つの因数に分け、一方を「公開鍵」としてインターネット上を流通させ、もう一方を「秘密鍵」として個人が保有します。元の番号の提示が必要なときは、相手の前で、公開鍵に秘密鍵を掛けて復号してみせることで、その番号の所有者であることを証明することができます。マイナンバーでいえば、公開鍵は、マスクをかけた別の番号のことで、秘密鍵は、それを使って復号できる番号のことです。

ところでインターネット上のPC同士の通信システムにはクライアントサーバ(C/S)システムとピアツーピア(P2P)システムがあります。C/Sでは秘密鍵を含めた全ての情報をクライアント(個人)とサーバ(中央管理者)の2カ所で同期させながら保持する必要がありますが、P2Pではピア(個人)の1カ所で済みます。

ここで問題なのはC/Sでは秘密鍵が2カ所に存在することで、個人にしてみると、自分以外に秘密鍵を保持して暗号を解くことのできる人物が存在していることになり、その人物が法人で、さらに公的機関であれば、「公知の秘密」という矛盾が生じることになります。

そこでJibangoIDの登場です。マイナンバーはC/SシステムにおけるデジタルIDですが、JibangoIDはP2PシステムにおけるデジタルIDです。マイナンバーにJibangoIDを被せたデジタルIDはP2Pシステムに乗せることができます。素のマイナンバーは厳重なセキュリティーで守り、中央サーバの奥底に保管しなければなりませんが、マイナンバーをJibangoIDでマスクすることで、気軽に外に持ち出せ、安全にインターネット上を流通させることができます。

マイナンバーと紐づけられた医療情報も同じことで、素のままで第三者(企業)の利用を許可するのは危険です。JibangoIDと紐づけられた情報なら、個人が特定されないので、第三者が自由に利用することができます。

マイナンバーをインターネット上で流通させるのが、漠然とした不安感なら、マイナンバーと紐づけられた医療情報を第三者が利用するというのは、現実的な不安です。医療情報というのは、他人に知られたくない特定の疾患等の情報を含み、個人が特定されると結婚差別や就職差別につながりかねないからです。その不安を根底から払拭できるのが、JibangoIDと紐づけられた医療情報であることは、これ以上言を俟たないでしょう。

(なお、この項でのJibangoIDは、マイナンバーという日本の国内向けのデジタルIDに対応するので、奇数列のNational JibangoIDとなります。)

民主的選挙とJibangoID

民主主義は無記名投票による選挙を前提に成立しています。これが記名投票だと、形だけの選挙、形だけの民主主義になることは誰にでも想像がつくでしょう。

アナログの投票用紙は現物の紙で、名前は書いてありませんが、渡された時点で、その人のものであることは明らかです。しかしデジタル化した投票用紙は実体のない電子媒体なので、誰のものであるかを示すためにデジタルIDを振る必要があります。 それに使うデジタルIDとしてC/SシステムのIDを使うと、誰が誰に投票したか中央のサーバにわかってしまうので、無記名投票になりません。P2PシステムのIDを使えば、誰に投票したか本人しかわからないので、無記名投票が成立します。

すなわち、デジタル化した選挙で、無記名投票を成立させるには、P2PシステムのデジタルIDを使う必要があるのです。それがJibangoIDです。

ところで、WHOのような人類規模の国際機関の代表を民主的に決めるのに、紙の投票用紙だと80億人は多すぎて、無記名投票は事実上不可能です。そこで、投票用紙を電子化して規模の制限を無くし、JibangoIDを振ることで無記名化することで、WHOのような人類規模の国際機関の代表を民主的に決めることが可能となります。

さらに、WHOのように、不特定多数の人々(人類)のために仕事をする機関が、特定の人々(巨大企業、国家)から資金提供されると、特定の人々のために仕事をすることになり、原則から外れます。 したがって、その資金は、提供者が特定されない匿名寄付による必要があります。人類規模なので、匿名Bitcoinです。

デジタルプロダクツの販売方法

デジタルプロダクツというのは現物が存在しない電子的な記録であり、オリジナルさえ創造すれば、全く同じものを、コピーするだけで手間暇(コスト)をかけずにいくらでも生産できるという特徴を持ちます。その特徴のため、これまでのアナログプロダクツとは全く違う販売方法が求められます。

既存のアナログプロダクツの販売方法とは、生産者が宣伝広告で需要を喚起し、それに応じた「特定の人」(消費者)から注文を受けて、オリジナルと同等の現物を手間暇(コスト)をかけて生産して発送し、代金は、コストに利益を上乗せした金額(生産者が決定)を請求し、強制的に徴収するというものです。

一方、デジタルプロダクツは、生産者がオリジナルを創造し、そのコピーを「不特定多数の人々」に向けて発送(発信)し、代金は各自の効用(満足度)に応じた金額(消費者側が決定)を任意に支払ってもらうという販売方法が想定されます。

要約すれば、アナログプロダクツが「特定の人」に向けて仕事をして「特定の人」から義務的な支払いを受けるのに対し、デジタルプロダクツは「不特定多数の人々」に向けて仕事をして「不特定多数の人々」から任意の支払いを受けるということです。

以上を式を用いて、もう少し具体的に説明します。

対面:アナログプロダクツ商品=代金…①
遠隔:アナログプロダクツ商品+C/S型ID=代金+C/S型ID…②
遠隔:デジタルプロダクツ商品+P2P型ID=代金+P2P型ID…③

対面では「商品=代金」…①の式で販売されます。取引相手は目の前の人物で特定されており、他にIDなどの個人情報は必要ありません。この式における商品は現物(アナログプロダクツ)であり、代金は現金(アナログキャッシュ)です。重要なのは等式が成立することで、右辺と左辺が等価交換されることで正当な取引が行われます。

遠隔になると、商品がアナログプロダクツの場合、購入者を特定し、本人の元へ現物を届けるために、住所などの社会的プロフィールと紐付けられたデジタルIDが必要となります。このIDは本人と配送業者のデータサーバの2カ所で共有されるC/S型IDで、個人が特定されるIDです。代金も同様に、金融機関を介して支払われるので、本人と金融機関に共有されるC/S型IDとなります。すなわち遠隔でアナログプロダクツを販売する場合は、「商品+C/S型ID=代金+C/S型ID」…②の式で両辺に個人をが特定されるIDを加えて等式が成立します。

一方、遠隔でデジタルプロダクツを販売する場合は、不特定多数の人々に向けて配信されるので、購入者を特定する必要はありません。代金も金融機関を介さない、不特定多数の人々による任意の称賛払いなので、支払い者を特定する必要はありません。むしろ支払い者を特定すると「不特定多数の人々に向けた仕事(商品)に対して、特定の人々が支払う」ことになり、原則を外します。必要なのは、デジタル空間で不特定多数の人々の間で1対1で商品と代金を交換するための一意のIDであり、それは個人が特定されないP2P型IDです。これによって初めて「商品+P2P型ID=代金+P2P型ID」…③の等式が成立し、正当な取引が可能となります。しかし、これまではP2P型IDが存在しなかったため等式が成立せず、デジタルプロダクツの無償販売という、不当な状態が続いてきたのだと思われます。

そこでP2P型IDであるJibangoIDの登場です。JibangoIDを式③に当てはめると「デジタルプロダクツ+JibangoID=Bitcoin+JibangoID」となります。この式の右辺はまさにJibangoWalletですが、デジタルプロダクツにJibangoIDを添えて公開されたものはJibangoWalletによって正当な報酬の支払いを受けることができます。

例えば、デジタルプロダクツとしてフリーコメントを当てはめると、フリーコメントにJibangoIDを添えてSNS上に投稿すると、それを読んだ不特定多数の人々の評価に応じてJibangoWalletによる称賛払いを受けることができます。

他にも、デジタルプロダクツの代表的なものにフリープログラムがありますが、LinuxOSのようなフリーウェアは、正当な販売方法が無いために、生産者であるプログラマーの無償提供が常態化してきました。その結果、linux CentOS のサポート終了のように、人類は優れたデジタルプロダクツを失いつつあります。このような損失を食い止めるためにも、式③の等式が成立する正当な販売方法が、一刻も早く普及することが望まれます。

「仕事」のペダル

 人が働いて食べていくということは、自転車のペダルを漕ぐようなものだと思います。
  「お金を稼ぐぞ」という意気込みでペダルを踏み込むと、反対側のペダルに乗って「仕事」が後から付いてきます。
  「仕事をするぞ」という意気込みでペダルを踏み込むと、反対側のペダルに乗って「お金」が後から付いてきます。
  傍から見ると違いがありませんが、内面の幸福感はだいぶ違うのではないでしょうか。
  不特定多数の人々が、各自どのような意気込みで自転車を漕ぐかによって、人類全体の幸福感も、だいぶ違ったものになるでしょう。

ところで、これまで例示してきた数学、フリープログラム、フリーコメント等々のデジタルプロダクツは、個人が不特定多数の人々に向けた「仕事」であり、寄付に使う匿名Bitcoinは不特定多数の人々が個人に向けた「お金」です。つまり、これも「仕事」のペダルと、後から付いてくる「お金」のペダルの組み合わせです。 人類に普遍的な価値を生み出す個人の「仕事」に対して、後から不特定多数の人々が匿名Bitcoinを寄付して称賛するという、人類規模の「仕事」のペダルを、Jibangoは提供します。

個人はインターネット上で活動する際に、自分のJibangoIDを表示することで、それがそのまま寄付を受ける意思表示となります。人類に普遍的な価値の提供などと大げさでなくとも、小さなフリーコメントであっても、誰かの心を動かしたら、寄付を受ける可能性があります。

Jibangoは理論や理想だけを述べて終わりません。試用段階ですが、すでに具体的なプロトタイプが起動しています。このサイトがそうです。Jibangoは覚醒した個人による自発的な参加を歓迎します。